第8514回

農地を手放したい人と今からやってみたい人

団塊の世代と呼ばれる後期高齢者75歳過ぎの人から、後継者として農業をやってみようかという人がいるから、その人に農地(地目畑)を譲りたいという相談がありました。日本の農地(田・畑)は農地法に守られ、個人財産にもかかわらず自由に売買することが出来ず、売主買主が契約してもその後各市町村の農業委員会へお伺いをして、許可(届出)を得ないと法務局の所有権移転登記も出来ない仕組みになっています。

農地を農地のまま所有権移転をする場合、農地法第3条の規程に合致するかどうかが審査されます。この条文の目的は、農地の不適切な取得(投資目的など)を防ぎ、農業従事者による安定的な農地利用を確保することです。私流に言うなら、農地を守る法律だと言えると思います。農地法第3条は、農地や採草放牧地の権利移動に関して、農業委員会の許可を義務づける規定です。売買や賃貸借などを行う際には、必ず許可が必要なことは先述の通りです。

農業委員会が許可を出すには、以下のような要件を満たす必要があります。

効率利用要件:申請者が既存の農地と新たに取得する農地を効率的に利用すること

農作業常時従事要件:申請者またはその世帯員が農作業に常時従事すること

農地所有適格法人要件(法人の場合):農地所有適格法人であること

地域との調和要件:農地の集団化や周辺農業への悪影響がないこと

このように厳格な基準のもと、農地が耕作放棄地にならないように管理されてきたわけですが、農家離れが多くなり、2023年の農地法第3条改正では、「下限面積要件の廃止」がはかられ、これにより、小規模農業への参入がしやすくなりました。従来は、農地取得後の経営面積が原則として都府県で50アール(北海道は2ヘクタール)以上必要でした。

2023年の改正でこの要件が撤廃され、面積に関係なく農地取得が可能になり、小規模農業や新規参入者にとって大きな障壁が取り除かれました。背景にあるモノは、農業従事者の高齢化・減少により、農地の有効活用をどのようにはかるかが大きな課題になっています。小規模でも意欲ある新規就農者の参入を促進するため、制度の見直しが行われました。面積要件がなくなったことで、家庭菜園レベルからのスタートも可能になりました。

このように農地の売買もやりやすくなりましたが、これの背景は農家住宅の空家化防止対策が根底にあります。庭先に100坪程度の畑や、家の後ろに1反(300坪)くらいの農地が本格農地とは別にあるのが日本の農家風景ですが、これの第3者(非農家)取得が困難でした。本来は古民家住宅が欲しいのですが、前後に農地がついてあります。23年改正は、これの解決策でもあります。

結論として、農地の売買は比較的簡単になったとは言え、宅地や雑種地のように全くフリーハンドにはなりません。高齢化のため手放したいという売主の意向と、新天地で頑張ってみようかという人の考えがまず一致しないとことは進みません。

電話で相談 メールで相談