第8623回

大谷翔平に見る商売繁盛の基本3/8

アメリカでは1960(昭和35)年代以降、大資本の攻勢が日本以上に強く、それこそ善悪よりも損得の価値観が先行する社会になっていき、一般の人々の小さな善意がそれほど評価されない社会になりつつあったのだと思います。時は流れそんな時に、大谷翔平選手の人間としての善意・正直・情熱・謙虚な良い行為が、アメリカ国民の前で示されたのです。

かつてのアメリカ人の大半が白人であった頃は、大谷翔平選手のように心優しく人々に対しても寛大な人々で満ちていたはずです。それが大資本攻勢の与える影響が世の中に浸透して行った結果、人々の間に大きな経済格差が生まれていきました。そのことによって、金持ち階級の人々の間に尊大さが生まれ、低所得者に対して非道徳的・非倫理的な態度で接する社会的風潮が形成されていったのだと思います。

そこへ大谷翔平選手が登場したことで、アメリカの金持ちもそうでない人も、損得の価値観で生きるより、善悪の価値観で生きることの尊さを改めて痛感したのでしょう。著者の社会教育家・田中真澄氏は、ある意味大谷は、立派な商人だと繰り返します。田中氏は『商人』の代表として、雑誌『商業界』の発行元株式会社商業界の代表・倉本長治氏(1899~1982)を紹介し、倉本氏の『商売十訓』を取り上げ大谷が、これのほとんどを身につけていると成功の秘訣を説いています。

1損得より先に善悪を考えよう。

2創意を尊びつつ良いことを真似ろ。

3お客に有利な商いを毎日続けよ。

4愛と真実で適正利潤を確保せよ。

5欠損は社会のためにも不善と悟れ。

6お互いに知恵と力を合わせて働け。

7店の発展を社会の幸福と信ぜよ。

8公正で公平な社会活動を行え。

9文化のため経営を合理化せよ。

10正しく生きる商人に誇りを持て。

ユニクロを展開する柳井正氏(ファーストリテイリング代表取締役)は、倉本長治氏(1899~1982)を尊敬する人物の一人ですが、倉本氏の言葉『店は客のためにある』で、「儲けは、己の全身全霊をかけて人に喜んで頂く先にあります。結局のところ、応援してくれる人を何人つくれるかがすべてです」というくだりは、まさに大谷の成功について解説していると思います。私も『商売十訓』を大谷に当てはめてみたところ、例えば最も関係ないと思える7でも、ドジャースの10連覇は大リーグにお祭り騒ぎをもたらし、次に続く選手が出てくる萌芽になるだろうと合点します。

アメリカ大リーグの著名な選手がこぞって大谷を讃えるのは、野球の選手なら誰もが夢に描く二刀流を、見事に実現した彼の長年にわたる真剣な努力に対して、自然に頭が下がるからです。この超人的な努力は、本来、商売繁盛の理想的な基本なのだと言わねばなりません。

大谷翔平選手に見る2つの成功原則は、一つは『絶えざる基本徹底』、もうひとつは『絶えざる自己革新』だと田中真澄氏は書いています。氏はこの二つを、自転車の両輪に例えて説明しています。後輪が『基本徹底』で、前輪が『自己革新』に相当します。自転車を運転する場合、まず後輪を動かすことから始め、同時に、前輪で方向を決め、さらに道の状況に応じて方向を変えながら進んでいきます。

もう一つ大谷は、花巻東高校野球部の佐々木洋監督と1年生の時に出会い、有名になった『マンダラアート』を作っていますが、そこに記されている項目には、大谷翔平選手の『基本徹底』と『自己革新』の具体的な目標が見事に示されています。さらにこの1年生から大谷は人生で大切なのは、『一引き二運三学』の3つだと言い続けてきました。

まず最も大事なのは、人様からの引き(引き立て)であり、それが良い運につながるからです。そこで大谷が掲げた『運』を良くする具体的項目として、基本徹底に属する5項目、すなわち『道具を大切に使う』『あいさつ』『ゴミ拾い』『部屋そうじ』『審判さんへの態度』と、自己革新に属する3項目『本を読む』『応援される人間になる』『プラス思考』の合計8つを掲げています。

そしてこの8項目の実践を毎日毎日自らに課し、それを習慣として身につけたのです。彼の習慣は、一朝一夕に出来たモノではありません。長い歳月をかけて毎日繰り返し行ってきたからこそ、大観衆の前でも何のためらいもなく堂々と出来るのです。明日は4回目です。

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