北方領土のことをよく知らない私
アルジェリア人質事件で、プラント建設大手日揮(横浜市)の日本人駐在員も人質として死亡した可能性があると報道されています。心からご冥福をお祈りします。こんな犠牲の中で、日本国内の安寧が続くのかと、腹立たしい思いがします。私はこの件で書く情報を、持ち合わせていません。
何もない今日は、中国が騒がしい尖閣諸島と対極にある北方領土について、私も知らなかったというネタを披露します。北方領土は、第二次大戦末期にアメリカがソ連に対して、対日戦争に参加して貰う代償として与えた領土なのです。
アメリカは戦争末期、ソ連に対して対日戦争に参加するように強く求めました。ルーズベルト大統領の最大の関心は、いかに米国軍人の犠牲者を減らして日本に無条件降伏をさせるかでした。
千島列島(根室海峡からカムチャッカ半島の南、千島海峡までの間に連なる列島)をわが領土とすることができるという約束で、ソ連は対日戦争に参戦したのです。戦争終結後、1951年9月8日のサンフランシスコ講和条約では、「日本は千島列島に対する全ての権利、請求権を放棄する」とされたわけです。
そもそも北方領土問題という種をまいたのはアメリカでした。それなのにアメリカは、冷戦が勃発した後、日本が国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の領有を諦めて、南側の二島の「歯舞群島(はぼまい)」「色丹島(しこたん)」の返還で手を打ち、北方領土問題を解決しょうとすると、猛烈に反対し、解決できないようにするのです。理由は、日本とソ連の間に友好関係を作らせないためです。
現在では、「北方四島」と呼んでいますが、北側の二島「択捉」と「国後」は千島列島の南側。「歯舞」「色丹」は北海道の一部であり、歴史的に見ても立場が全く異なります。これだけ見れば、日本に北方領土(四島)を返せという根拠が見当たりません。日本が無理を言っているのです。
日本人の多くは、アメリカは沖縄を日本へ返還したが、ロシアは北方領土をいつまでも返さないではないかと思っています。つまりロシア人を悪く思っています。しかし歴史の背景には、このような不可思議な事実が数多く横たわっているのです。
要するにアメリカが悪いわけでもない。自国の利益のためには、それ以外を犠牲にして目的を達成するというのが、世界中の国家主席の常識であり、アメリカも例外でないと言うことは肝に銘じておくべきです。このように考えると、日揮の犠牲者が一層不憫になりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
孫崎享(まござきうける)著 戦後史の正体/アメリカに潰された政治家たち