第3827回

戦後史の正体by孫崎享

面白い本です。1943年生まれ、外務官僚であった孫崎享(まござき・うける)氏が資料を丁寧に解析して書いた戦後史です。1945-2012までの日本とアメリカの歴史を書いています。事実を分析する中で、著者自身も驚くような記述に出くわしたと書いています。あの総理がこんなことを、昭和天皇の驚くべき発言も掲載されています。真実かどうか、私は検証してはいませんが。

本人が前書きで書いてあるように、これまでほとんど語られることがなかった「米国からの圧力」を軸に、日本の戦後史を読み解いた本です。こういう視点から書かれた本は、いままでありませんでした。これからもないでしょう。「米国の意向」について論じることは、日本の言論界ではタブーだからです。

孫崎氏の経歴を見ると、入省後しばらくして西側陣営から「悪の帝国」と呼ばれたソ連に5年、「悪の枢軸国」と呼ばれたイラクとイランにそれぞれ3年ずつ勤務をしました。その間東京では、主として情報分野を歩き、国際情報局長もつとめました。

それらの経験や、防衛大学校での戦後日本史の研究から、見えてきたのが、戦後の日本外交を動かしてきた最大の原動力は、米国から加えられる圧力と、それに対する「自主路線」と「追随路線」のせめぎ合い、相克だったと書かれています。

氏は「米国との関係は、そのときの状況によって変化する」と総括しています。日本には日本独自の価値がある。それは米国と必ずしもいっしょではない。力の強い米国に対して、どこまで自分の価値をつらぬけるか、「それが外交だ」と外交の重要性を力説しています。

この本を読んでいると、これまでとんでもない首相だと私が考えていたリーダーが、案外国益のためにきちんとした矜持を示していたという事実の紹介もされています。氏は日本の中でもっとも米国の圧力に弱い立場にいるのが首相だとも言っています。

よく言われている小泉純一郎元首相は、思想信条では郵政民営化を実現させたこともあり、「新自由主義者」として知られていて、米国にとっては可愛いポチであったようです。歴史はこれからを生きるための、道しるべです。

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