第3143回

還暦紳士の勇気ある決断

不動産価格の下落が、大勢の人を苦労させています。不動産はとりわけ土地ですが、昭和30年代から概ね右肩上がりで平成3年まで、多少の上下があったにしても、急勾配で右肩上がりのグラフを描いてきました。

それがここへ来て、地価が下がるところまで下がって相続税の基礎控除にまで反映されるまでになってしまいました。昭和50年は基礎控除が2000万円でした。昭和63年は4000万円、平成4年4800万円そして平成6年に5000万円になって、平成22年までの17年間高値のまま、据え置かれていました。

そして23年度、今国会で丁々発止議論されている予算関連法案に、政府はこれまでの相続税基礎控除5000万円+1000万円×相続人の数を、3000万円+600万円×相続人の数に変更する案を上程しています。このことについては、小欄でも既に書いています。

このような地価の下落をうけて、庶民の行動に新たな動きが加わったと今日感じることがありました。還暦を迎える紳士が、自宅の売却相談に来店されました。売買担当が出払っていたもので、私が接客させて頂きました。

15年前(平成8年)に3380万円で新築住宅を購入して、現在1500万円程のローンが残っています。「売却して、夫婦2人で、ゆっくりした老後をおくりたい。住まいは賃貸でもいいかな」というお考えでした。現在の評価は、1350万円です。売却した譲渡所得税は無税でも、弊社に頂く仲介報酬などを考慮すると、「追い金」がいります。

これまでは失礼ながら若い人で、夫婦離婚して売却するというケースが多かったように思います。当然ローンの返済開始からまだ期間が浅いので、売却しても売却損つまり借金が残ります。その際の追い金は、どちらかの親御さんが出していました。

しかし先のケースでは、自分の預貯金から捻出するわけです。なかなか勇気が出ないのか、昨日まではこのような決断はあまりありませんでした。それはわが社にだけなかったものかもしれませんが。

同じような債務超過に陥っているケースは、水面下では数々あります。それが先延ばしになっているのも事実です。25年間のローンを組んで、途中で住宅金融公庫融資から銀行融資へ切り替えたと言いますから賢い選択をされて、ただの一度も滞ることなく返済を続けてきたこの紳士に、何の落ち度もありません。

3380万円で、マイホームと共に夢を売った不動産業者も、正義の味方です。確かに地価が高騰し利益を得た人も散見されますが、それはほんのごく一部であって、大半の庶民はこのように高騰の反動に泣いています。もっともこの紳士は、「仕方ない」となかば笑っておられましたが。私もつい暗い気分になり、掛ける言葉も見つかりません。

ここに私の、「定期借地権構想」が頭をもたげてくるのです。建物の減価部分は、この紳士の言うように「仕方ない」、つまり自分が使って楽しく生活したものだから減価して当然。しかし土地は、時代の流れとは言え、少なくてもこの紳士には責任のない範疇での出来事です。

誰の責任でもないが、これまでの15年間で2000万円を遙かに超える対価を支払った人に、さらに追い金をむしり取るこの現実に、私は解決策を「定期借地権分譲住宅」に求めるわけです。

また今日、同じように地価の下落をどうしても認められない御仁のところに、状況報告のためにお邪魔をしました。現在1坪あたり9万円で売り出していますが、隣の方から4万円であれば買うというオファーがありました、という報告です。その御仁は、「これまで通り下がった地価は必ず上がるから、急いで売ることはない」という返事でした。

すべての地価の下落を、この定期借地権でカバーすることは出来ません。ただし、商業用地はともかくとして(実際は逆で、大規模商業用地ほど18年前から定期借地の活用が進んでいます)、住宅用であれば、これからの供給は私が提唱する定期借地権分譲住宅ではないかと叫びたい。

11日祝日12日(土)13日(日)の三日間、春日町890番地、ハローズ春日店東隣の現場で、完成見学会を開催しています。15時までやっています。「所有」でもなく、「賃貸」でもない、住まいの新しいカタチです。

電話で相談 メールで相談