第8769回

大地を揺るがす圧倒的歌声とピアノin珈笛画廊・ほのほ

週刊新潮の表紙絵を描いている成瀬政博氏の作品に囲まれた空間で、ホーミーの世界的伝承者『劉偉』と、世界を魅了するピアノMINAのミニコンサートがあり、私も本当に久しぶりに珈笛画廊・ほのほ(高松市中野町)へやって来ました。毎週のように有名どころをお呼びして開催しているほのほですが、案内をもらう割には参加率が悪い観客の一人が私です。

会場は元は父親の会計事務所を改造したモノで、決して広くはありません。最大収容人数も、40人くらいですか。本来画廊ですから、ピアノ設置のほかに、これと言った音響装置もありませんが、演者と観客の距離が近く、双方が楽しんで帰路につくといった箱です。そのため演者は、3度目4度目と多くが常連化しています。しかし私は悲しいかな、何度名前を聞いてもぴんときません。聞くと涙する場面が、多々あるのですが。

本日のピアニスト、水上裕子さんは、元はクラシック音楽専門と自ら名乗りながら、2025年米JazzDiscoveryジャズアルバム部門CD売上1位というから、ジャズ業界でも高く評価されているピアニストのようです。さすが鍵盤をまな板のように操り、関の孫六ばりの包丁で切り込んで音を出しているような、力強さを感じます。自ら66歳とカミングアウトし、誕生祝いケーキを贈られていました。

一方男性の『劉偉(りゅうい)』さんは、モンゴルの音楽というか発声テクニックである伝統的唱法の第一人者と、言われているようです。彼一人で同時に二つの声を出すというきわめて独特の唱法を演じています。加えて口笛も入れながら3つの声(音)を使い分けています。1曲の中でその音色を使い分け、その移行がものまね芸人のようにAさんの声Bさんの声といったようにメリハリの付いたモノでなく、実にさりげなく流れていきます。

ホーミーを聴いた記憶はあるのですが、これほどのレベルは初めてだと思います。またこの劉偉さんが、現役のヘビースモーカーだというのにも驚きました。あんな音を出していたら、私のような食道がんのみならず、咽頭がんを疑われかねない。やはりモンゴル民族は、広い大地の上で、あのような発声を民族全体に受け継がれ、その第一人者が劉偉さんだと言った方が分かりやすいか。

私の所属する高松栗林ライオンズクラブにも、プロの声楽家が二人います。一人は昨日の次期幹事を励ます会で大活躍のL佐藤丈史前幹事、もう一人は元劇団四季所属のL米田優(現高松市議)で、2次会では余興でもちろんギャラなしで歌ってくれます。比べてみて、声が美しいのは共通していますが、やはり発声の仕方が違うようで、ピアノの水上裕子さんが「日本人と違う」と評していました。

もう一つ私には、その中の一曲『イヨマンテの夜』が刺さりました。今からだと30年以上前、中虎の中川武雄さんが「豊友会」という経営者勉強会の席で歌いあげたという記憶があります。高齢者諸子は記憶にあると思いますが、同曲は「伊藤久男さんが昭和25年にレコードで出し、昭和39年の紅白でも歌った」曲ですが、その後アイ・ジョージさんがカバーして歌ったものを中川武雄さんがまねて素人ながらプロの歌声として歌いあげ私の胸に響いた曲でした。何だか分かりませんが、泣いていました。そんな日曜日の、午後のひとときでした。

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